それ、登山なんですか?

「誰も登ったことがない海外の山に満足いくラインで登りに行きたいんです。」とか「フリークライミングで岩のてっぺんを目指したり、凍った滝を登って山頂を目指したりしてるんです。」とか「夏には沢から数日かけて山頂を目指すんです。」そんな登山をしたいんです。なんて話しをすると、多くの方が 『なにそれ?それ、登山なんですか』と言われます。

僕と関わりのある人達の多くは『それ、登山でしょ!何言ってんだ?』となる、そんな人種には当たり前となってしまう話なのですが、少なからず、ガイドをご依頼いただいている方の多くはそんな認識ではないですよね。それは「山の雑誌の一部に掲載されている一部の人がやること」といったイメージの方も多いはずです。

でも、【それ、登山なんです】

例えば、有名な北アルプスの槍ヶ岳、夏になると多くの登山者で賑わうこの山、山の地図を見たり、インターネットから情報を得る限り、頑張れば登れるかな・・・と思い、実際に登った人も多いかもしれません。途中途中山小屋があり上高地から出発し2泊ほどの計画で戻ってくることもできるでしょう。
でも、この山、今でこそ、山小屋もあり、登山道もあり、山頂直下には梯子まであるわけですが、この山を最初に登った人はどうだったのでしょうか・・・

槍ヶ岳を最初に登ったのは江戸後期1828年の山岳修行僧・播隆上人と言われています。
播隆上人は中田又重郎を案内人として1826年に槍ノ肩付近まで登り、そこから2年後1828年に登頂をしています。当然、道も宿も整備されていない時代です。登頂までには相当な苦労があったと思います。

この誰も登ったことがない山に播隆上人と中田又重郎が挑み、その後、鎖を取り付けられるのですが、彼らの苦労が無ければ今の槍ヶ岳登山はなかったわけで、その後、宿の整備、道の整備、1892年のウエストンの登頂などによるプロセスを経て、現代の多くの登山者を受け入れられる槍ヶ岳となり、今、夏シーズンには槍ヶ岳登山として認知されているわけです。

もし、今の時代に誰に、登られたことがない山【槍ヶ岳】として存在していたならば、多くの登山者は未踏の槍ヶ岳に行くことはないでしょう。そして、きっと現代の播隆上人と中田又重郎のようなクライマーが現れて初登頂がなされ、その後一般的になるまで多くの人を迎えいれられるようになるプロセスが必要なのです。

そう、皆さんが登っているその山、最初の一歩を誰かが踏み出して今があるのです。

『多くの人が登っていると知っている山や登山道』だと多くの人が行ってみようとなり

『登った人がいる山(登山道)だと知っている』程度となると、行く人がグンと減り

『誰も登ったことがない山』となると、ほとんど行く人がいなくなるのです。


この誰も登ったことがない山にいくことが、【最初の一歩】となるわけです。

そして最初の一歩こそが一般登山のスタートに繋がっていて、世界最高峰のエベレストでさえ、初登頂(エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイ)までは様々な苦労があったものの現在ではガイド登山が可能な山になっています。

現代において、未知の山といのはほとんどありませんが、それでも一部地域に未踏の山は存在しますし、未踏のラインというものもたくさん存在しています。さらに季節が冬となるとさらに増えることでしょう。ひょっとした未来には多くの人が訪れるような山であったり、クライミングルートが作られていくかもしれません。

皆さんも今年行ってみようと思っているその山の【最初の一歩を踏み出した人】の話しなどを調べてみると、その登山がより楽しめるかもしれません。

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